オジサンが欲しい




高く澄みきった少女の声が、不気味な小唄を歌いながら近づいてくる。

床を踏みしめる足音は台所あたりで止まり、冷蔵庫を開ける音がかすかに聞こえた。

寺尾の目に、冷蔵庫の前に立つ少女の姿が映る。

ゴスロリ系の服に、フリルの付いたスカートを穿いた黒髪の少女だった。

ロリータファッション、というべきなのか。

顔は見えないが、体格からして中高生であることが解る。


「ああ、たまらないね。
君の血を舐り、啜ると、かすかに甘い蜜の味。
君は世界に一つだけ。
僕だけの……」


そこで、歌が止まった。

冷蔵庫が閉められ、少女が静々とこちらに歩み寄る。

正面を向いた少女の顔が、露わになった。


寺尾は愕然とする。



「君は……」




寺尾は芋虫のように転がされながらも、首をもたげて少女を見上げた。







いつぞやコンビニを訪れた、あの少女だった。


母校の生徒というだけに、印象に残っていたから覚えている。



「おはようございます。
やっと起きたんですね?」




少女は眩い笑顔でそう微笑んだ。





< 11 / 19 >

この作品をシェア

pagetop