私は彼に愛されているらしい2
しかし不意に後ろを気にして早瀬は1人歩く人物に声をかけた。

「ん?どうした沢渡。」

急に声をかけられたことで沢渡の視線が勢いよく上がり瞬きを重ねる。

「あ、いや。俺も設計変更あったから急いでやらないとなって落ち込んでました。」

「あはは。落ち込むことかよ。」

「でも俺が一番多かったんで。」

気にすることはないと沢渡を慰めに入る早瀬、そんな二人を見て君塚は目を細める。

そして東芝に視線を送ると変わらずに有紗と戯れていたところだった。

小さな唸り声を上げて視線を宙に上げても目に映るのは空だけだ。

「案外、鈍い?」

君塚の声は風に埋もれて消えてしまった。

有紗が大 輔と付き合い始めてから1か月半が経とうとしている。

有紗の部屋に大輔の私物が増えて生活がしやすくなったころ、世間話をするような調子で大輔が言った。

「なあ、一緒に住む部屋探さないか?」

「え?」

洗濯物を畳んでいる有紗の横でパソコンを見つめながら大輔が言う。

「ここなんか2人の職場の中間だし、そこまで家賃も高くないからいいと思うんだけど。」

そういって見せたパソコンの画面をのぞき込み有紗は驚きの声を漏らした。

「本当だ。2LDK?」

「新しいのだとこれとか。」

画面を変えて大輔はまた違う物件のページを表示させる。

切り替わった画面の内容に有紗の目は輝いて感嘆の声をあげた。

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