私は彼に愛されているらしい2
めげずに即座に頭を働かせて問題に取り組んでいく姿勢は他の男性社員も感心するほどで、それ故に有紗に助け船は要らないと周りは分かっていたのだ。

「バカ?話にならない。」

「…すみませんでした。」

玉砕してもくらいついていく、いい師弟関係の2人が一緒にいる時間はもうすぐ1年になろうとしていた。


「俺さ、もっちーは東芝さんが好きなんじゃないかって思ってたよ。」

今日のCAD端末は沢渡の隣か、彼の姿を見て思った矢先に投げられた言葉は有紗を疑問符だらけにした。

いつものことだが沢渡はすぐに自分のペースに引き込もうと意味深な言葉を最初につかって気を引こうとするのだ。

今回もそれは例外ではなかったらしい。

「は?」

「結構そう思ってた人は多かったけどね。あ、今でも。」

端末の電源を入れるなり何を言うのかと有紗は目を細めて怪訝な顔をする。

「えー…?」

完全に起ち上がるまでの暇潰しをしろと言われているのだろうか、頬杖をついているが沢渡の顔はがっつり有紗の方を向いていた。

相手は先輩、しかも関わりがある部分が多い人物はあまり邪険にしない方がいい。これは逃げられないのだなと心の中でため息を吐いて話に乗ることにした。

「…確かに東芝さんは素敵ですけど…。」

はっきり言って面倒くさい。当たり障りのない返事をして後は適当に流しながら席を立とうと考えた矢先に聞こえた言葉で有紗の意識は完全に沢渡に傾く。

「だからもっちーは彼氏が出来ないんじゃないかって思ってたんだよ。」

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