私は彼に愛されているらしい2
「好きだけじゃない、いろんな事に折り合いをつけて克服して2人で乗り越える。それが出来なきゃ夫婦になんてなれない。そこで躓いたら長くは続かない。」

聞きたくないなんて思うこともなくなった。

「有紗は逃げてるだけ。面倒だなんだと逃げてるだけ。やれば出来るんだから、逃げるな。」

私の何が分かるのだと反発する気持ちなんて最初からない。

この人は何を言っているのだと疑う気持ちなんて皆無だ。

「この先誰とだってこの壁にぶち当たるのよ。誰となら乗り越えられるか、それが共に生きてくってことよ。」

舞の言葉が痛いくらいに突き刺さってくる。しかしそんな間隔は話の序盤で既に麻痺していた。

まるで波のように時折強く押し寄せては消えていく、そしてまた襲ってくる繰り返しだ。

特にそれは夜、1人になった時に一番強く響いてきた。

もうこれ以上心を乱したくはない。そんな思いで有紗は携帯の電源を落とした。それでもやはり気持ちの揺らぎは止まらなかったのだ。

「結婚願望が無い、か。」

舞の言葉がしこりとなっている。

可笑しなもので傷付いたというよりは諦めたような納得に近かった。

力の入らない体をベッドに預けて思いを過去に向けてみる。今までに付き合った彼氏から何回か出てきた結婚という言葉。

「有紗と結婚したいな。」

その度に有紗から出てくる言葉は否定的だった。

まだ学生なのに。
親に甘えてばかりで何が結婚だ。
貯金もないくせに。
仕事からの逃げ道にしたいだけだろう。
その先に何があるのだ。

< 157 / 304 >

この作品をシェア

pagetop