私は彼に愛されているらしい2
そんな有紗の姿を見て2人の話を聞いた時の自分の気持ちを思い返してみる。

最初は凄く驚いた、そして困惑もした。やがて落ち着いて考えて抱いた感情は。

「…私の事をかばったって聞いたのよ。」

細い声で呟く舞に動揺するも有紗は何とか受け止めてそれに応えようとした。

「…まあ、そうです、ね。」

「西島たちに仕事しろってはっぱかけたんだって?」

「あー…まあ、そうですね。」

「ありがとう。」

優しい声に有紗は瞬きを重ねる。

いつのまにか逸らしていた顔を戻せば照れながらも微笑む舞が待っていた。

「かばってくれたって聞いて嬉しかった。」

困惑の中で抱いたものはまるで学生のようだと蔑みたくなるような呆れた気持ち、そして次に来たのは自分をかばってくれた有紗への感謝だった。

やはり恥ずかしくて照れくささから不機嫌に待っていたけど本当は嬉しくて心は躍っている。

「や…えっと。」

「あとゴメン。話してくれないのが悔しくて無駄に大輔くんとのこと口出ししちゃったね。余計なこともいくつか言った。」

そう、心は躍っていても途端に襲ってきた自己嫌悪に感情が乱されていたのだ。

みちるに言われて分かってはいた、でも自分の欲が止められなくて有紗に噛み付いた結果突き放されてしまったのだ。

それを怒る権利は舞にはない。寧ろ大人げないと自分を恥じるだけだった。

それが表情に出ているのだろう、申し訳ないと悲しそうな顔をする舞の姿に有紗は今までの自分を振り返らされる。

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