幸せの掴み方
「よし、これでOKだな。
 柚、暫く、俺が担当するから・・・また連絡する。」

そう言うと、湊は昔のように、柚葉の頭を撫でながら、菜々美を降ろし
湊は、スタジオに戻って行った。

そんな湊の後姿を見ながら、柚葉は、ため息をつき、タクシーを止めて
マンションへ帰った。

家に帰った柚葉は、ご飯を作る気になれず、菜々美に、簡単にご飯を
食べさせると、菜々美をお風呂に入れて、休ませると、柚葉は、一人
リビングで、湊との事を思い出していた。



あの日、湊が、最後に残したチケットのコンクールの入賞作品を
見に行ったのは最終日だった。

柚葉は、立ち直れない心を奮い立たせ、優香と二人で見に行き、
会場に入ると、沢山の写真が飾られていた。

そして、一番奥の湊の写真の前に立つと、そこには、あの日、
始めて湊と結ばれた、翌朝の窓からの朝日を眺めている柚葉の姿を
撮った写真が飾られていた。

その姿は美しく、全てを包み込むような光の中に、柚葉は立っていた。

湊の写真の題名は、

        『愛する、女神』

                  そう、書いてあった。

その写真を、今も思い出すと、何とも言えず、苦しくなる。

湊との時間が、短いながらも、強烈で、自分が本気で好きになった人
は、湊が最初であった。



今は、圭祐を愛してはいるが・・・・湊と違って、柚葉は愛されている
自信は、相変わらずなく・・・・

あの秘書の件もあってか、最近ますます落ち込んでいる柚葉であった。
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