World Walker
まだりせはこの世界に到着したばかりで、現在の時刻を知らない。

もしかしたら深夜で、起きている者が少ないのではないだろうか。

灯りがついている建物が少ないのは、そのせいかもしれない。

「参ったわね…じゃあ夜分遅くに押しかけていって泊めてくれっていうのも悪いわね…」

一人呟きながら歩くりせ。

どこか旅人を泊めてくれるような宿はあるだろうか。

深夜に訪れても快く迎え入れてくれるような宿がいい。

とりあえずここよりも、建物の密集している向こうへ歩いていった方がよさそうだ。

細く舗装されていない砂利道を歩いて、りせは目の前に広がる街らしき場所へと向かう。

眼前に広がるのは、バラック小屋のような粗末な家屋。

それらが丘の上に密集して建てられている。

そしてそんなみすぼらしい建物を見下ろすように聳え立っているのは、尖塔を集めて構成したような、教会とも城ともとれる石造りの巨大建造物。

そしてその建造物を照らし出す、大きな赤い月…。

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