エリートなあなたとの密約
するとふたり席の間の手摺りに置いていた右手に、修平の大きな手がそっと重なる。
彼のその手の薬指には、真新しいマリッジリングが填められていて、それを見て思わず胸が高鳴った。
「――でも、ときちゃんに久々に会うことが出来て、本当に良かったと思う……。
今でもよく覚えてるよ。俺たち一家と初めて会った頃は、子供なのにやけに大人びていたというか、きっと表情や感情を失っていたのかな。
泣きもしない、笑いもしない……小さいながらに人生に絶望したような目をして、縁側で膝を抱えて座ったまま、ひとりで庭の池をジッと見つめているような子だったから。
……名古屋から逃げて疎遠になっていた俺が言える立場にはないけど、彼女の幸せそうな顔を見られてすごく安心したんだ。式にときちゃんを呼んでくれた、琉にも感謝してるよ。
まあ、当のふたりは“俺らに当てられた”って言ったけどね」
ブラックの薄手ジャケットに白シャツを合わせ、タイトなベージュパンツ姿の修平は、いつもの休日よりフォーマルな印象を与えている。
その彼をジっと見つめていると、フッと一笑したダークグレイの瞳はとても慈愛に満ちたもの。
私は誰よりも愛しい人から眼を離すことなく、小さく笑ってからゆっくりと口を開いた。
「あのね、怜葉ちゃんの過去を知らないから上手くは言えないけれど。……でも、今の怜葉ちゃんなら大丈夫だと思う。――結婚式に招待して貰えて嬉しいね」
「ああ」と、はっきり頷いた彼の声色はとても穏やかなものだった。