エリートなあなたとの密約


「ええ!?知ってるも何も、ビジネス誌で何度も拝見してるよー!
その記事には社内では“貴公子”って呼ばれてるって書かれていたし、写真からも物腰の柔らかそうで素敵な人に見えたよ」

実は穏やかなところは修平と雰囲気が重なるかもしれないな、と思っていたから顔をよく覚えているのもあるけれど……。


それにしても財界の著名人と彼の幼馴染みが結婚するのだから、本当に世間の繋がりは不思議なものだと思う。


「俺も集まりで何度か会ってるけど、本当に物静かないい人だよ。……まあ、真帆が他の男を誉めると少し妬けるかな」

珍しく拗ねたように言うものだから、私はそれが可愛くて思わずくすくす笑ってしまった。


「ふふっ、ごく一般的な感想を言っただけなのに。
それに私、修平以外の男性を見てもときめかないもん。……こっちの方が心配が尽きないのにぃ」

「真帆ちゃん以外に触手が伸びるのは皆無に等しいから安心して?」


「よく言うっ!」と、すっかり新婚モードな自らをふたりで向かい合って笑う。――この瞬間、言い表せないほどに幸せだと。


「でも怜葉ちゃんの表情を見てたら充実してるのが伝わってきたよね」

ほんのり彼へのお小言を口にはしたけれど、もちろんジョークだと分かっていた。だってそう言う彼女の顔を見れば、高階さんと素敵な関係を築いているのが一目瞭然だったから。


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