エリートなあなたとの密約
するとのんびりマイペースな松岡さんは徐ろに幸原くんに近づき、おもむろに肩を組み始めたではないか。
「ねえハッピー。人妻って響き、良くね?」
「……は、はぁ?」
「俺ね、最近人妻モノに凝ってんの。で、手近な真帆ちゃんでリアル疑似体験的?」
松岡さんはキラー・スマイルを武器に、唐突にとんでもない話をふっかけるのが常。
それが卑猥な方に歪曲するオプション付きとなれば、相手は狼狽するばかり。こうなると被害者はなす術もない。
「はいテンション・アップアップー!せっかくのハッピー・マンデーなのにぃ。ハッピーの名が廃るよ?
ていうかね、真帆ちゃんにセクハラされてたのは俺なのにぃ。
俺の栄養源のコーヒー淹れてくれないなんて、立派なセクハラでしょ?ね?」
この状況を楽しむかのようなスマイル・キラーの表情が、時おり悪魔の笑みに映るのはきっと私だけではないと思う。
幸原くんの様子から察するに、その意見に否定したいはず。だが、彼は直属トップの上司。さらに、当事者の私も直属の上司にあたる。
――いわゆる面倒な板挟み状態。他人事のようになるけれど、お気の毒さまとしか言えない。
「ハッピー、でしょ?」と、再び同意を求める松岡さんが、今度は決して獲物を逃さないチーターにも見えてくる。
「え、ええ、まあ」
曖昧に返したものの、私と松岡さんの双方をチラチラ見ては困惑の表情を浮かべる幸原くん。