エリートなあなたとの密約


親友の瑞穂なんて、テーブル席から嬉々とした視線を送ってくるから楽しんでいること請け合いだ。


そんな彼女とは絶対に波長が合うだろうし、いずれ絵美さんを紹介しよう。


「でー、真帆ちゃん!」

「はいっ!?」

色々と考えてトリップする最中、不意に呼ばれた私の声は見事に裏返った。


その張本人こと華やかな壇上を挟んで立つ松岡さんの目は、いつになく真剣だ。


「修ちゃんに泣かされたらすぐに帰ってきなさい。お兄さまの広い胸で」

「絶対イヤ!」と、ここは素直にキラー・スマイルに容赦ない返答をする。


「そうよ!まったくバカね!その時は私の胸で泣かせて……」

「お姉さまのストレートな胸だと、今度は痛みで涙が止まらないでしょ?」

「ああ?もいっぺん言ってみろや」

松岡さんの明らかに失礼な発言で、眼光が一気に鋭さを増す。こちらまでゾクリとするのだからその威力は満点。


流石、社内で密かにルック・キラーと呼ばれている絵美さんだ。


「――その前に真帆を行かせないよ」

「泣く子も黙る“真帆バカ”だもんね」

「松岡……」

「なぁに?修ちゃん」と、嘆息した修平に満面の笑みを浮かべる松岡さん。

「アンタも言いくるめられんな!」

「イッテ!」

そこですかさず修平の背後に回り、背中を容赦なく叩いて檄を飛ばす絵美さん。


「だ、大丈夫?」

あまりに不憫な仕打ちに声を掛けると、彼は穏やかに笑って頬にキスをしてきた。


「隙あり」と平然とした顔で言うものだから、鼓動は一気に跳ね上がる。


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