エリートなあなたとの密約


だからこそ、あたたかいお言葉をかけて貰えるこの感謝を絶対に忘れてはいけない。


たとえ今後なにがあっても、笑顔だけは絶やさず、このめまぐるしい毎日を強く生き抜くためにも……。



「モテ期再来してたんだ?」

「お疲れさまです。そうですね、ありがたいことです」

「午後はお手前拝見しちゃおーっと」

昼前には所用がすべて片付いて急ぎ足で部署に戻ると、ちょうど松岡さんが横浜から帰社したところらしい。


すぐさまデスクを挟んで様々な報告する私に、お疲れさんとだけ言って頷いた彼。


そして、あー暑かったと言いながら、首元のネクタイにシュルリと手をかけた。

「もう脱がれるんですか?」

「え?着脱プレイ所望してる?」

ニヤリ、と意地の悪い笑みを浮かべて言う彼には、「いいえ!」と鼻息荒く返すばかり。


松岡さんが珍しく一般的なスーツの着こなしをしているのは、支店の雰囲気に沿ったものだから。


普段からこの格好でいれば本当にエリートさんに見えるのだけれど、彼にとっては窮屈で息苦しいに違いない。


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