エリートなあなたとの密約


まして、自社のために頑張る企業戦士に手を差し伸べるのは当然、とこれまで教わってきたから私の今がある。


こうして試作部が信頼を得ているのも、先頭に立つ修平たちの努力の賜物。そんな彼らが培ってきた、“試作部イズム”は今後も進化し、着実に受け継がれていくだろう。


「では、私はこれで」

話を終えて席を立とうとした瞬間、「吉川さん、結婚おめでとう」と唐突に言われたため、思わず目を丸くしてしまう。


じつは、連絡を頂いたのは営業本部長からだった。彼は恰幅が良く、溌剌とした40代後半のパワー溢れる男性だ。


「幸せにって、もう幸せか!結婚式楽しみにしてるよ」と、豪快に笑うその顔は穏やかなもの。

「ご臨席賜りましてありがとうございます。当日もどうぞよろしくお願いいたします」と、笑みを返した私は深々と一礼した。


正直に言えば、私たちの結婚話が広まった時は、こうしてお祝い下さる方ばかりではなかった。


はびこっていた社内恋愛の禁忌を破ったのが役職者となれば、それも当然だと分かっていたから。


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