エリートなあなたとの密約
どうやら談笑の間に控えていたのだろう。すぐさま飲み物と先付けが運ばれてきた。
修平と高階専務の前には、この料亭が懇意にしているという蔵元の限定醸造の冷酒が。そして私と怜葉ちゃんの前にはウーロン茶がそれぞれ置かれた。
新酒の美味しさが想像を超えていたのか、男性陣が同時にフッと頬を緩ませたので、傍らの私たちは小さく笑ってしまう。
そして冷えたグラスを傾けると、渇いていた喉にひんやりしたウーロン茶が心地よく染み渡る。
「高階さんのところはいつですか?」
「年内には始動しますよ」
修平の問いかけに短く答えた高階さん。彼らが呟いたのはそれだけで、以降は目で会話をしているようだ。
当然それが意味するものを知らないし、理解も出来ない私。向かいの怜葉ちゃんも同じなのか、視線が合うとお互いに微笑で誤魔化す。
彼女のほうも、ここで踏み込んではいけないことを分かっている、とその顔に書いてあったから。
何でも知りたいと思うのは本音でも、大人の事情が絡むとそんなわがままはまかり通らない。
もし本人に関わることならば、いずれ話してくれる時は訪れる。もしくは社内で知るであろうから。
「怜葉ちゃん、これ食べた?」と明るい声色で彼女に問いかけて、素知らぬ振りをする。
「この切り方と味付けは多分、まーくん特製だと思いますよ。
あの人、見た目がいかついのに料理の腕はピカいちなんです。」
「すごいっ!ああ秘訣が知りたい……!」
実は先付けにあまり手を出さない私なのだけど、今日は見た目で食欲を刺激されていたほどで。箸をつければ、そんな期待をあっさり超えた美味しさだった。