エリートなあなたとの密約
さらり、と料理の作り主を言い当てられる彼女。それだけでこのお店と馴染み深いのかが分かってしまう。
「あ、まーくん本人にはさっきの発言は内緒ですよ?——すぐに調子に乗りますから」
真っ黒な瞳をいたずらっぽく輝かせながら、甘い声で茶化して言うのでつい笑ってしまった。
「怜葉ちゃんのお陰で、彼の才能が磨かれているんだね」
先ほどのやり取りの通り、彼女が上手い具合に彼のやる気を引き出しているに違いない。
「あ、そうだ。何でしたら、まーくんに料理指導して貰いませんか?」
「え!?ほんとっ!?
直近だと結婚式とかでバタバタなんだけど、もう少し先でも良かったらぜひっ!」
和食好きな修平のために、研究に勤しんではいるけれど。やっぱりプロの足下にも及ばない。
思いがけない嬉しいお誘いに目を見開く。その慌てっぷりを見て、今度はくすくすと怜葉ちゃんのほうが笑っている。
「プロからワザを盗みましょう……って、私はそんな段階じゃありませんが」
「——ええ、そうですね。でも、貴女の愛情なら」
「それはつまり、私の料理は愛情だけで味は美味しくないと。——ですよね?彗星さん」
隣の高階さんから掛けられたひと言に、顔を向けることなく淡々と返している怜葉ちゃん。