禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
それ以前に、元々デュークワーズの戦力は頼り無いものであったのだ。
本気で牙を剥いたギルブルクの軍勢に、デュークワーズの軍隊は圧倒的な力の差を知りながら朽ちていくばかりであった。
もうおしまいだと、地下に逃げ込んでいた大臣が取り乱して王宮の間へと飛び込んで来た。
「もう…もうデュークワーズはおしまいだ!ギルブルクが本気で制圧に掛かってきた!もはや勝ち目など無い!!」
「落ち着きなさい、ラハ大臣。私の命が在る限りデュークワーズは滅びはしません」
みっともなく取り乱す初老の男と対照的に、若き女王は冷静に厳しく言い放った。
「しかし陛下……」
ヴィレーネに叱咤され情けなく萎縮した大臣は、今度はその場にいたリヲに喰って掛かった。
「リヲ!!そもそも貴様のたてた作戦が悪いからこうなったんじゃないのか!?何が聖女を囮にだ!しかもこの大事な時に副長にまで逃げられて!この役立たずが!!」
自分の意見を押し通した事を棚に上げて怒鳴り散らす大臣に、リヲは一瞥すると
「申し訳ありません。しかし今はそんな事を言ってる場合ではありません。ラハ大臣、ここに居ると貴殿も敵が侵攻した際の巻き添えを食いますよ」
冷やかにそう言った。
「くっ…!儂は地下に戻る!!リヲ!貴様の処分は戦いが終わったら厳しく決めてやるからな!」
どこまでも情けない捨て台詞を吐いて、大臣はビクビクと王宮の間から去っていった。