禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
誰もいない静かなだだっ広い部屋は会議室か何かだろうか。椅子が沢山並んでいる。
ヨークはアンを部屋に押し込むと警備に着いていた兵達をシッシと追い払って
「ちょっと前準備だ。お前達はそこで待て」
と言い放って部屋の扉を音をたてて閉め切った。
暗い部屋の燭台にひとつだけ明かりが灯された。ヨークが指から小さな炎を出したのだ。
そうして立ち尽くしたまま己を睨み続けるアンの前に椅子を引いてきて座ると
「教えてやるよ。これから起こること、起こすこと全部。てめえにゃそれを知る権利がある」
どっしりと座った足を組みながら、蝋燭の灯りを映すアンの瞳を見つめて言った。
―――お前は、この世界の歴史を知ってるか?
唐突な質問で始まったその語りに、アンは一瞬驚きを見せ黙って首を横に振った。
基本的な世界史ぐらいなら当然知識として有る。けれど今ヨークが問うてるのがそんな事ではないことぐらい、アンにだって分かっていた。
この世界の“真の”歴史を、知ってるかと、この男は聞いたのだ。