スイートペットライフ
「うちのミィに比べたら、申し訳ないけど世界一なんてとてもとても」

やっぱり……、やっぱりそう来たか!

顔の前で手を左右に“ないない”とでも言いたそうな失笑を浮かべている大倉さんからこっそり距離をとろうと画策する。

辱めを受ける前に逃げろと頭の中でエマージェンシーコールが鳴り響く。

ひっそりと繋がれた手を離そうとした。

が、反対にその手はぐいっと引っ張られた。

「ほら見て!この栗色の毛並み!ふわふわの手!ちょっと潤んだ大きな瞳!もうこれ以上可愛いものなんて世の中に存在しないでしょ!!!」

私の両肩に手を置いて、カップルに紹介される私。

私の目の前のカップルは“ポカン”だ。そして次第に痛い人を見る目で私達二人を見ている。

気まずくなった私は「どーも」と一応会釈をしてみたが、カップルからの視線にこれ以上は耐えられそうにない。

痛い人はこの人だけで、私はいたってノーマルなの!

まだまだ熱く語っている大倉さんに、「そ、そーっすね」と返すしかない男の子に同情申し上げる。

「あの、オミ君そろそろ行こうか」

嬉々として私の話を続けている大倉さんを無理矢理カップルから引き離し、小声で「すみません」と言う。

「大変っすね」

「頑張ってください」

それぞれから同情の言葉をもらい私達は車へと向かった。

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