スイートペットライフ
「ミィ気持ちいいね。後でお散歩しようね」

大倉さんの笑顔もいつもよりも当社比でさわやかに見える。

説明も何もなく連れてこられたのに素直に「ハイ」と答えてしまう。

「あらあら、仲がよろしいことで。ほほほ」

女将さんが何やら勘違いしているので、急いで訂正しようとする。

「そうなんです。“なかよしこよし”なんです」

間髪いれずに邪魔された。

38歳のおっさん(には見えないが歳だけだとおっさん)が使う言葉じゃないよ。

“なかよしこよし”なんて。突っ込みどころが満載すぎてどこから手をつけようか悩んでいる隙に目的地に到着して、その機会が失われた。

「こちらです」

そう言って案内された部屋に入ると大きな窓からは先ほどの竹林が見えて、差し込む光と竹林の影が作る涼しげな風景が目の前に広がっていた。

「夜にはライトアップされて綺麗なんですよ。露天風呂からぜひご覧くださいね」

そう言いながら、お茶を入れてくれて女将さんは部屋を出て行った。

さすが天下の(?)エバースターの社長が予約する部屋だ。今まで泊った旅館とは格段に差があった。正直ウキウキしている“ゲンキン”な自分がいる。

しかしそのウキウキ気分はすぐに現実に引き戻された。
入って右側の襖をあけるとそこにはベッドが二つ。
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