スイートペットライフ
「逃げないで。ミィはちゃんと僕の傍にいてほしい」

いつもと違う真剣な声色に少し驚いて、大倉さんを見るとその目はじっと夕陽を見つめたままだった。

そしてもう一度ギュっと力を込めて握られた。

いつもと雰囲気が違う大倉さんに驚き、どう答えていいのか迷う。

自分の意志に反して、同居するようになったけれど、この生活が嫌じゃないことに気が付いている自分がいる。

仕事で疲れた時、気分が落ち込んできたとき少なからず彼の存在に助けられている。

そんな彼に私は何ができるだろうか……。ふとそんな風に思い、彼の手をギュッと握り返した。

「ここにいますよ。ちゃんと」

そう答えて、もう一度手を握った。夕陽に照らされた大倉さんの横顔が、ふわりと笑顔になった。


***

お互い大浴場でお風呂に入ったあと、浴衣に着替える。

男前の浴衣の破壊力にしばしくらくらしながら、夕飯は旬の懐石料理をお腹いっぱい食べた。

お昼の延長でまだ「あ~ん」を要求されたけれど華麗にスルーしておいしい食事を堪能し、二人で少しだけビールと日本酒を飲んだ。

私は普段飲まない日本酒ですぐに顔が赤くなり、それを見た大倉さんは、スマホを取り出して撮影を始めようとしたので全力で拒否した。
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