スイートペットライフ
「うちの担当の先生がそれをみて“照井さんも青木さんを見習いなさい”なんて言ってくるのよ。今まで仕事で煩いこと言わない良い先生だったのに、あなたのせいで余計な仕事が増えたの!まるで私が仕事できないみたいな言われ方したし。どう責任とってくれるの?」

あまりの言い草に目を見開いてしまう。完全に言いがかりだ。

「どうって……私にはどうしようもないから」

そう答えると同時に肩を押され、後ろのコピー機にぶつかった。

「あんた目ざわりなの!いい格好ばかりして一番むかつくタイプだわ」

育ってきた環境のせいで、同級生に辛辣な言葉をかけられたこともある私はこういうときは黙って相手の気が収まるのを待つのが得策だということを知っていた。今回もそうやって乗り切ろうとしていた。

そこにコピー室のドアが開く音が聞こえた。

「これ、コピーとりたいんだけどいい?」

薄っぺらい用紙を一枚ひらひらさせながら登場したのは諏訪君だった。

「きゃ!」

今までドスの聞いた声をだしていた同じ人物の声とは思えない可愛らしい声が聞こえた。
しかし今の会話を聞かれていたと悟った照井マミはそそくさとその場を離れようとしていた。

「照井さーん。俺さ、こんなところに先輩呼び出して、ギャーギャー言う女大っ嫌いなんだ。よく覚えておくといいよ。それと俺のこと好きなのかどうか知らないけど、俺が好きなのは青木だけだから、無駄な努力しないで他に目を向けて」

わー余計なこと言わないでよ。

コピーを取りながら爆弾を投下する諏訪君。

出口に向かっていた照井マミは怒りで肩が震えていた。

「……失礼しますっ!」

地に這うような低い声でそう言い残すとコピー室のドアを乱暴に閉めて出て行った。
< 183 / 249 >

この作品をシェア

pagetop