スイートペットライフ
針のムシロのような状態で仕事を終えてそそくさと電車に乗った。同じ立場なはずなのにどうして諏訪君はあんなに堂々としていられるんだろう?

こういうときは糖分補給に限る。私は電車を降りて駅前のコンビニでお気に入りのアイスを調達した。

マンションに着き玄関を開けると、ご飯の準備をしているいい匂いが漂っていた。

「ただいま戻りました」

リビングに顔を出してそう言うと「おかえり」と返事があった。

キッチンに向かって買ってきたアイスを冷凍庫に入れると「早く着替えてご飯にしよう」と大倉さんにせかされて、着替えを済ませた。

ダイニングには、栗ご飯、さんまの塩焼き、筑前煮とホウレンソウのおひたし。豚汁。

秋の味覚と私の好物が並んでいた。

「いただきます」と同時に声を発し食事を始める。

「今日ねミィがさみしそうにしてるからどうしても早く帰りたいって言ったら、真田か珍しく二つ返事でOKしてくれてね。今までそんなことなかったのに。ミィは真田に何したの?」

「は?真田さんとはオミ君の留守中に数回ここで会っただけですけど」

「で、その時何を話したの?」

「ん~?オミ君の話だけです」

本当にそうだったから、これ以外答えようがない。

「本当に?アイツもしかして俺のミィを横取りするつもりか?」

いや真剣にそれはないと思う。

真田さんはきっと私のためじゃなくて大倉さんのために今日は早く帰してくれたんだよ。私がぎくしゃくしていたのは、お見通しだからきっと気をつかってくれたんだろうな。

他愛もない会話をしながら食事を終えて、大倉さんが食器を洗って私がそれを拭き片付ける。これが二人で食事したときのいつもの流れだ。
大倉さんは仕事が残っているらしく部屋に入っていった。
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