スイートペットライフ
楓さんと大倉さんは離婚したの？

その事実よりも、それを知らせてくれなかった事実のほうが私には辛い。

大倉さんが結婚していたということで私は今までにないくらいに傷つき憔悴しているの大倉さんだってそれは分かっているはず。

なのに教えてくれないってことは、彼も私との関係を清算したかったってことかな。

そう思うと自分勝手な私はやはり涙をにじませる。

自分から言い出したことも自分の中で消化できないなんて情けない。

そんな風に思いながらコーヒーを一口飲むと、カウンターから奥さんが出て来た。

自分用のマグカップを持って「ちょっと休憩」と言って私の横に腰をおろした。

「美空ちゃんさぁ、今猛烈に悩んでるわよね」

「猛烈……。確かにそうですね。悩んでいるっていうか落ち込んでいるっていうか……」

ぼそぼそと話す。

「恋愛でしょ。今まで美空ちゃんがそんな顔したことなんてここに通い始めて一度もなかったもの。苦しい？」

そう言って私の手をそっと取って奥さんの手で包んでくれた。

久しぶりに感じた体温に思わずなんとかこらえていた涙が決壊した。

「……はい。苦しくて手に負えない……です」

「そう」

そう言って手を撫でてくれる。

「でもね、相手もきっと同じ思いをしているはずよ。相手はエバースターの社長大倉さんでしょ？」
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