スイートペットライフ
「どうして知ってるんですか!?」

大倉さんと私の関係は事務所関係の人たちには佐和子先輩以外話をしていないはず。佐和子先輩は絶対に口外しないはずだし。

「実はね、大倉さんに美空ちゃんの話をしたの私なのよ」

二コリとほほ笑みながら衝撃的事実を離す奥さん。

私は涙でぐちゃぐちゃの顔もかまわずに奥さんのほうを見た。

「美空ちゃんよくこの店来てたでしょ?大倉さんも去年はうちに結構通ってたのよ。主人とここで打合せをしたりしてね。一人でもたびたび息抜きに来てくれていたの」

全然気がつかなかった。確かに私はこの店ではほとんどカウンターに座るから店内の様子なんて気にしたことなどなかった。

「美空ちゃんカウンターで私と良く話してたでしょ。はっちゃけたお母さんの話だとか」

「たしか、していたような気が……」

「彼ね、いつもあなたが来ると話を聞いていたみたいで『先生の事務所の子ですか?美空ちゃん?』って聞いてきたの。私も彼の人となりを知っていたから『そうよ』なんて軽く答えたんだけど、その時の大倉さんの満面の笑みったらなかったわね」

カウンターでの話をまさか聞かれていたなんて。恥ずかしさとともに大倉さんがあのマンションのモデルルームで私を知っていたのか謎が解けた。

そしてふと思い出した。いつか袋いっぱいにキウイを持ったおばあさんが道路でそれを転がして困っていたときに、ここのテラス席から笑い声が聞こえて来たことを。

あれ大倉さんだ……。

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