スイートペットライフ
そう話し終わると、くるりと私のほうへ向き「一旦おしまい」とだけ呟いた。

車がマンションの前に到着する。ドアを開けてくれた真田さんを見ると少しさみしそうな顔をしていた。きっとこの話を知っていただろうけど何度聞いてもせつないんだろうな。

「真田。今から明日丸一日、完全に休んでもいいよね？」

車から降りた大倉さんは私の背後から肩に手を置いて真田さんに休暇の許可をもらっている。どっちが上司なんだか。

「結構ですよ。しっかりとお休みくださいませ」

真田さんは笑顔でそう答えると車に乗り込んだ。


「行こう、ミィ」

そう言われて手を引かれた。もう二度と繋ぐことのないと思っていた手に惹かれてもう二度と一緒には戻らないと思っていた部屋に帰っていく。

コンシェルジュのおじさんに大倉さんが「ただいま」と声をかけると一瞬驚いた表情を見せた後、笑顔で「おかえりなさいませ」と言ってくれた。

二人で部屋の中に入る。

「おかえりなさい。オミ君」

「ただいま。ミィ」

お互い笑顔で交わす挨拶に心が温かくなる。私の大事な彼が戻ってきてくれたことを実感した。
< 230 / 249 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop