片想連鎖 ~伝えたい心~

――― その日の朝。

いつも通り美樹と絵里の3人で学校に向かって歩いていた。

校門を目の前にした所で、
『ムラムラ!はよーっス!』
と、爽快な声が聞こえてきた。

それと同時に、絵里が、
『…イッテェェ!!』
と叫ぶ。

絵里の髪型が少し崩れていたから、どうやら頭を叩かれたらしい。


「あたしの頭を叩くんじゃねーよ!佐々木ぃ!!」


「あ。藤原さんと山口さんも、おはよー!」


『シカトぶっこいてんじゃねぇ!』
と言いながら、絵里が手をグーにして、佐々木君の脇腹にパンチを入れた。

『……っっ!!』
と、声を発っせない位に悶絶している所を見ると、どうやら予想以上に痛かったらしい…。


「ふふっ…。佐々木君、おはよう。絵里の鉄拳の味は、どうだった?」


「ハンパねぇ…。ムラムラは格闘家かっ!」


「女のパンチ位で、あんた、どんだけひ弱なんだよ?!」


美樹、絵里、佐々木君の3人で話をしていたけれど、私は素知らぬ顔をして、校舎に目を向けて歩いていた。

そんな私の視線を遮る様にして、佐々木君は目の前に手の平をヒラヒラさせてきたんだ。


『藤原さんは、挨拶してくれないんだ?』
と、意地悪そうに挑戦的な笑みを浮かべながら、佐々木君が言った。

私はあまり佐々木君とは接したくなくて、ぶっきらぼうに…
『…はよ』
とだけ返した。


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