誠につもる白雪かな
力なく柱に寄りかかった沖田に山南は口開いた。


山「凛さんは私に歴史を変えると言いました。今彼女は僕たちに起こる災いを防ぐためにそれを一身に受けているのです。この意味が分かりますか?」



沖田はチラリと山南を見やる。



総「山南さんの話はいつも難しいんだよな...もっと僕にもわかるように話してくださいよ...」



山「歴史上、私たち新撰組の行く末は決して穏やかではない。恐らく...沖田君は池田屋で労咳を発病して戦線を離脱していたでしょう。そして平助君も永倉君も、敵に斬られて無傷とは行かなかったはず...。なにより彼女は池田屋の報奨金が出たとき驚いた顔をしていました。それは、歴史上よりもかなり上乗せされていたから...。それ以外にも少しずつ変わっているはずです。」


総「.....」


沖田は意味がわからないと言うように一瞬眉間にシワを寄せた。


山「そして私も...彼女に救われた。」


沖「山南さんが?」


山「えぇ。私は彼女のお陰でここで居場所を無くさずにすんだ。」


山南を見やると苦笑いをした。


総「山南さんは昔からの仲間でしょう。居場所がないなんてそんなのおかしいですよ。」


山「いいや、沖田くん。私は...新撰組が大きくなるにつれて段々と形見が狭くなっていたんですよ。私なんかが居なくても土方君たちは立派にやっていける。ならば、私は必要なのかと。」


黙って沖田は聞き入っていた。


山「ですが凛さんの明るさと優しさに救われた。彼女は何気ない日常の行動で私に居場所を与えてくれました。土方君と意見がぶつかっても、必ず彼女がそれを止めてくれた。凛さんのお陰で私は土方君とうまくやれているんです。」



総「....そうなんだ。」


山「沖田君。」


総「はいなんでしょう?」


山南は正座したまま沖田に近づくと腕を掴んだ。


山「彼女をここへ連れて来た日から...仲間として認めた日から...私達は凛さんを、この動乱の歴史の渦に否応なしに巻き込んでしまった。そして彼女は嫌な顔一つせず、誰にも頼らず、私達を支え、守って来た。共に歩んだ年月は短いかもしれない。ですが、凛さんが新撰組を思う気持ちと私達が凛さんを思う気持ちは同じ。ならば‼‼今こそ私達が彼女を支え、守るべきではないのですか‼‼」



声を抑えてはいるが沖田の腕をつかむ山南の手からは並々ならぬ凛への思いが伝わって来た。



総「山南さん...」


山「君は一人じゃない。恋仲かもしれないが、彼女が受ける苦しみを何も君だけで背負う必要はない。仲間でしょう。」



そう言うと山南は優しく微笑み手を離した。



山「行きなさい。凛さんが待ってる。」



沖田は一礼すると部屋を出て行った。

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