誠につもる白雪かな
帳場は他のものに任せて二人は枡屋奥の庭で縁側に座っていた。


喜「して、御嬢さん。名前はなんて言うんや?」


凛「あ、すみません!!凛です。山村凛と申します。」


喜「凛はん...見かけもやけどえらい綺麗な名前どすなぁ...」


そういって肩を抱く喜右衛門に吐き気を覚える凛だったがわざと恥ずかしそうに頬を染めた。


凛「恥ずかしいです...。」


喜「かいらしなぁ...。そや、なんで追われてたんや?」


急に真面目に聞いてきたので少し距離を取り正座をした。


凛「それが....(確か出入りしているのは...思い出せ...)」


凛は必死に歴史を思い出しているだけなのだが喜右衛門は困っていると勘違いしてた。


喜「ゆっくりでええよ?」


凛「じつは...長州に縁があるという宮部鼎蔵さんというお方にお会いしたくて...」


とたんに驚いたような顔になる喜右衛門。


喜「知り合い?」


凛「いえ。違います。ただ素晴らしい思想の持ち主と聞いてお会いしてみたくなったのです。それで道端で長州のお侍さんに宮部鼎蔵さんについてお話を聞いていたら新選組に見つかったんです...。」


喜「そしたらうちに逃げろと言われたんやな?」


凛「はい...本当にすみません...。」


首を傾けて見つめた凛を見ながら得意げに笑った。


喜「ははは!!ええって。宮部さんはな、うちにもよ来てはるし機会があったらあわせたる!長州の女子なんやからそれくらい当たりまえや!!」


胸を張る喜右衛門を見ながらやはりここが当たりだと確信した。
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