無垢・Age17
 でも今や携帯だけではない。
家電もガラパゴス化している。
日本だけに通用する商品を生み出すだけでは、競争社会を渡れないらしい。



このままでいくと、何処もカシコも失業者で溢れてくる。


そんなことを誰かが言ってた気がする。


近場には本当に仕事先がないのが実態だった。
勿論東京にもあるかどうかも解らない。
それでも私は東京行きを念頭においていた。




 でもその前に、どうしても遣らなければいけないことがあった。
それは学校の廊下に貼ってあった最後の一枚。
そう……
私は残りの全ての企業の面接を受けていたのだ。

それでも就職先は見つからなかったのだ。


(これがダメだったらもう後がない……)
気持ちは焦っている。
それでも何処かで、東京があると思っている自分がいた。

本当は恐くて恐くて仕方がない。
私は何度も何度も拉致された瞬間から始まった悪夢を思い出しては鳥肌を立てていたのだった。


それでもあの場所を目指すしか選択肢はなくなっていた。

だから最後に、この一社に賭けようと思ったんだ。


学校では、まだ進路の決まっていない生徒の指導に余念がない。
積極的にアドバイスもしてくれていた。


高校の就職情報が解禁されるのは七月一日。
就職試験が始まるのが九月十六日だった。

私は積極的に試験会場に足を運んでいたのだった。




 本当なら、卒業に向けて様々な活動に没頭しなければならないはずなのに、私は受験勉強する訳でもなく。
ましては自動車の運転免許も取ろうとしていなかった。

私は十七歳。
普通、免許は十八歳から交付だ。
でも誕生日過ぎてから試験を受ければいいそうだ。
だから高三で取得する人が多いのだ。

就活にも有利らしい。
でも私には……
そんな考えはなかった。
東京がある。
それが答えだった。

東京なら、免許が無くても困らない。
私はそう思っていたのだった。

それは満員電車の恐怖を知らない田舎者の発想だった。


あのハロウィンの悪夢そのままのような痴漢被害の実態さえも知らずに、軽く考えていたのだった。


でも本当のところ、私は免許を在学中に取得出来ない訳があるのだ。
それは私の誕生日が四月一日だからなのだ。




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