無垢・Age17
 それでも深夜営業の廃止から出きた日の出営業のせいで、朝から泥酔状態の人達で溢れかえっている聞く。


表面上は平和だが問題は蓄積されているようだ。


だから本当は私も辞めてほしかったのだ。

知れば知るほど。
聞けば聞くほど。
歌舞伎町は本当は怖い場所ではないかと思えた。

だから……
傍にいてくれることが物凄く嬉しい。





 アイツは私の家庭教師も買って出た。

疲れて果てているはずなのに……

そのパワー。
バイタリティー溢れた行動力は一体何処からくるのだろうか?

でもその講義がキツイ。
卒業は決まったも同然なのに、期末試験で上位を目指させる気らしい。

行為は嬉しい。
でも勉強を見てくれるのは嬉しくない。
だってバカだって解っちゃう。
本当は私は焦っていた。
アイツに知られたくなかったんだ。
この頭の出来の悪さを。


(お母さん。どうしてもっと出来る子に産んでくれなかったの?)

母の背中に向かって視線で八つ当たり。

罰当たりだと解っていても、やはり……

本当に兄貴達兄弟は、揃いも揃って天才だった。




 料理だってアイツの方が上手い。
一人暮らしでなれたそうだ。

その上漁師料理の手解きも受けている。


私だってカレーなら出来る。
それでも偶には失敗もする。

ルーを入れたカレーが煮詰まってくると、小さな輪が浮き上がりプチんと弾け飛ぶ。

その跳ねたカレーが皮膚にくっ付き火傷をしたり、盾にした鍋蓋を落としたり……
その度ギャーギャー喚きヒンシュクを買う。


『早とちりと慌てん棒も加わったか? これじゃ、俺の奥さん無敵になるばかりだな。その上におっちょこちょいのお転婆さん』
アイツはそう言って私をからかって笑うんだ。




 でも……
幸せだった。
最高に幸せだった。
幸せ過ぎて涙になる。

アイツは私を本当に愛してくれた。
本気で尽くしてくれる。

私にそんな価値のないことは解っている。

それでも、嬉しいんだ。
アイツと一緒に居られることが。

その上、家庭を一番に考えてくれて、家族を大切にしてくれる。

私にとって大事な家族を……

だから怖い。
その優しさが怖い。
怖くて怖くて仕方ない。


人魚姫のように泡となって消えてしまいそうで……

全ては私だけの夢物語のようで……




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