かっこ仮。の世界。
「未婚なら血縁者ってことで屋敷に住まわせても問題ないし。できれば僕の婚約者として居てもらえると助かるかな」
「婚約者ぁ?」
いやだ。嫌に決まってる。
こんな意味不明な男の婚約者なんて御免だ。
「もちろん、名目上だよ。ただ透理は目立つから、そうでもしないとそこらの助平な公達にちょっかい出されそうだし」
まてまてまてー!
「それ、なんの話よ?」
「うん。だから透理に懸想して、夜這いでもされたら困るってこと」
「よばっ……」
絶句。
そうか……ここは本当に平安時代なんだ…。
「この屋敷には結界があるから、僕が許可しない人間は入って来れないけど、一度許可しちゃうと次からは自由に出入り出来るからねぇ…道長様辺りに目を付けられると厄介だし」
ミチナガ……って、まさかあの藤原道長か⁉
「清明。そのミチナガ様って、もしかして藤原道長?」
一応聞いてみると、清明が頷いた。
「透理。道長様を知ってるんだ?」
「名前だけは…」
「そっか。あの人本当に女癖悪くてさぁ。まぁ、道長様でも僕の婚約者に手を出すようなことはしないでしょ」
諸事情全部すっ飛ばして、透理は清明の婚約者として屋敷に住むことになった。