かっこ仮。の世界。
文明って素晴らしいものでした。

「ちょっと!透理!いい加減に起きなさいっ」


べりっと掛布を剥ぎ取られ、身体を無理矢理起こされる。


「うえー。玉ちゃん、眠いよー」

「だまらっしゃい。清明の婚約者ならしゃんとしなさい」

「名目上だけだもん」

「やかましい。さっさと起きろ」


日が登るのとほぼ同じ時刻に透理は叩き起こされた。


起こしたのは、清明が透理に付けてくれた世話係兼護衛。


妖狐の玉若(たまも)。


護狐だと話相手にならないだろうと、清明が呼んでくれた。


なんでも清明の母とは従姉妹だとか。


安倍清明の母が妖狐だって、本当だったんかい。


なかなか豪快かつ男前の玉若さん。


美人なのに……。


ああ。でもそのふさふさした耳と尻尾は癒される…。


「ぎゃあ!」


思わずその尻尾に縋り付いて頬ずりすれば、玉若に蹴り飛ばされた。


「人間ごときが妾に触るでないっ」


ぶわっと逆立った尻尾。


ああ。可愛い…。


「朝餉の準備をする。さっさと来い」

「はぁーい」


もそもそと起きあがると、すかさず護狐達が着物を持ってきてくれた。

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