かっこ仮。の世界。



それまでの飄々とした態度から一転、清明が有無を言わさぬ、厳しい口調で言った。


空気さえも、張り詰めたものに変わって、透理は小さく身震いした。


「居候が主の世話をしない道理があるかえ?」


玉若がジロリと睨むけれど、清明は表情を変えるどころか、さらに厳しい表情を見せた。


「玉若。これは命令だ」


厳しい清明の表情と声睨む玉若さえも息を飲んだように清明を見つめていたが、やがて小さく溜息を付くと言った。


「清明がそこまで言うとは意外じゃったの。まぁ、それほど気に入っているのなら妾とてやぶさかではないよ。せいぜい逃げられぬようにしっかり見張っておくことじゃの」


にやり、と酷く意地の悪い笑い方をした玉若に、清明も何を考えてるのかわからぬ笑みを返し、何がどうなったのかさっぱりわからない透理ははてな?と頭にクエスチョンマークを浮かべるだけだった。


とりあえず、明日から昼餉と夕餉の支度の手伝いがなくなったということだけはわかった透理だった。


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