かっこ仮。の世界。
いつの時代も、プライドって面倒です。
「玉ちゃん?どしたの?」
滅多に見れない慌てた様子の玉若に、透理は驚いた。
「ええい?この馬鹿清明!何故気付かんかった!あの馬鹿が来たのじゃ!」
玉若は綺麗な顔をこれでもか、というくらい歪めていた。
「あの馬鹿……ああ、道長様?」
こてん、と首を傾げるのは清明の癖なのかな、と透理は思う。
「結界が反応しなかったから気付かなかった。透理。君は部屋に戻って。君を見られると色々と面倒だ」
玉若とは真逆に落ち着いた様子の清明は、透理にそう指示すると、自分は至極面倒そうに立ち上がった。
しかし。
来訪者があの、歴史に名を残す藤原の道長となれば、この目で実物を見てみたいという好奇心が透理を刺激した。
「嫌。あの藤原道長なら、この目で見てみたいもーん」
つん、とそっぽを向けば、清明がため息。
「わがまま言わないで、部屋に戻って」
「いーやーだー!」
「透理!」
「私は清明の婚約者なんでしょ!だったらご挨拶くらいするのが礼儀じゃないの?」
偽物がつ不本意な立場設定だけど、この際使えるものは何でも使ってやろうじゃないの。
透理に引く気はない。