かっこ仮。の世界。

「透理」


ようやく笑いが治まったらしい清明。


「何よ?まだなんかあんの?」

「いや?あぁ。何か、といえばあるかな?」


その秀麗な顔に意地悪そうな笑みを浮かべる清明に、透理の頭が警鐘をならす。


よくわからないけど、逃げろ、と脳が告げているようで、透理の足は素直に後ろに下がった。


だけど、少し遅くて。


清明の手が伸びたかと思うと、後ろ首にその手が回った。


「君は本当に面白い」

「……ちょっ⁉」

耳元で囁く清明の声が酷く甘くて、今度こそ脳が全力で逃亡指示を出すのだけど。


う……動けないーーっ‼


がっしり掴まれた後ろ首。


「ち……近いから!清明近いっ!」


ああ、もう!


こんな綺麗な顔を間近で見せられて、動転しない女子がいるわけない。


「透理?顔が赤いけど熱でもあるのかな?」

「ないっ!」


明らかにわかっていて、そう言う清明の腕を引き剥がすべく、腕を伸ばし、身体をひねり。


ぐぎ。



「いっーー!」


首がっ……!


「ぶっ…」

「痛い……」


これはあれだ。俗に言う寝違えた、ってやつだ。


いや、起きてるけど。


「ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎたかな?大丈夫?」

「大丈夫じゃないわいっ!絶対いつか仕返ししてやるから覚え…痛っ…」
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