あの夏、私は「恋」を知 り ま し た 。
お札を剥がした…?
まさか…
「それっ…あたしじゃない」
そう、あたしではない。
きっとあの風で剥がれたお札の事だろう。
「え、アンタじゃないの?」
小首をかしげあたしを見つめる。
「うん…風で剥がれただけだと…」
「ふーん。ま、どーでもいーや」
そう言って不審者らしき人はあたしの顔に再び近づく。
どーでもいーやって…。
この人本当になんなの。
「か、顔近い…です」
ふと気がつけば不審者らしき人はお互いの鼻が触れるくらいの距離になっていた。
「ってか、誰なんですかっ」
あたしが1番聞きたかった言葉だった。
「俺?…んー妖?」
あ…やかし?
妖って妖怪ってこと?
妖怪って…この世に存在するの?
「あー…妖怪ってこの世に存在するの?って思ってるじゃろー」
うぐ、当たってる。
でもさ…信じられる話じゃないよ。
妖怪なんて架空の生き物じゃなかったのかな。
「俺、赤鬼っ!よろしくなー」
赤鬼と名乗る彼はニコっと微笑んだ。
さっきまでは余裕がなく彼の顔しか見てなかったがなんか凄い格好をしている。
髪は赤色に染まっていて、頭には狐のお面がくくりついている。
そして微かにみえる鬼の角。
偽物かと思い…無意識に引っ張っていた。
ぐいっ。
「い、いたいたいたぁぁぁ」