ロング・ディスタンス
「神坂さん。どうしてそんなに私に構うの? 何で私を困らせるのよ?」
 栞は声を絞り出してたずねる。
「困らせるつもりなんかない。俺はお前を愛しているんだ。栞、俺を信じてくれ」

 神坂は栞の体を抱きしめる。
 彼女の全身に甘い酔いが回り、腰が砕けそうになる。こうなってはもう男から逃れることはできない。

「本当に……」
 開いた唇から吐息のような声が漏れる。
「本当にあなたを信じていいの? 私と結婚をしてくれるというの?」
「ああ、もちろんだ。栞、俺と結婚してくれ」

 あのプライドの高い神坂が、栞に膝を折って求婚の言葉を告げている。
 その瞬間に彼女の頭から全てが飛んでしまい、もう何も思考することはできなくなってしまった。後はもう運命の、あるいは神坂のなすがままになるしかなくなっていた。
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