ロング・ディスタンス
 きっと今の栞には何を言っても無駄だろう。おそらくというか絶対に神坂は彼女を選ばない。将来、栞が年を取ってその容貌が衰えた時、彼は彼女をあっさり捨てるのだろう。その時になって友人は初めて目が覚めるのだが、それまでに多くのものを失っているだろう。大切な親友がこれからも甘い夢を見続け、最後にそれを打ち砕かれるなんて、考えただけで胸が痛くなる。男に結婚の約束を破られたら、それこそ自殺だってしかねない。

 結局、他人というものはわかりえないものなのだ。そんな考え方は寂しいけれど、それが現実なのだ。
 
 成美は静かに携帯を切った。最後に「お休み」という言葉を交わしたかどうかも覚えていないほど、心が痛かった。
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