ロング・ディスタンス
「ああ、それ懐かしいね。あんた、卒業式の日にのび太のやつに告白してふられたんだよね。今だから言うと、あんたは悲しかっただろうけど私は内心ホッとしていたんだよ」
「ホッとした? 何で? 私、ふられちゃったんだよ」
「あんたにはのび太は似つかわしくないって思ってたから。あんたみたいな子にはもっと素敵な王子様が似合うって思ってたから。そこへいくと長濱さんは王子イメージばっちりなんだよ。イケメンでお医者さんで人柄もいいしさ。だから、やけ酒にチューハイを用意するはめにはなりたくないよね。彼とは上手くいってほしい」
「そう。応援してくれてありがとう。でも、私の中では長濱先生はあんまり王子ってイメージじゃないよ。前の職場では30過ぎなのに下っ端の研修医だったし。けど、彼は王子様なんかじゃなくてもいいの。先生が先生だから、先生みたいな人だから……」
 栞は消え入りそうな声で続ける。
「好きなんだ」
「そうか。そうか。それを彼にも言ってあげなよ」
「そうね。いつか言葉にして伝えられたらいいよね」
「伝えられるって」
「そうかな」
「そうだよ」
「わかった。ありがとう。お休み」
「お休み」
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