ロング・ディスタンス
 時間が来たので、太一は栞を連れて、集落にある辻堂の家へ向かった。

 辻堂の家は島の他の家と変わらない地味な日本家屋だった。
 同僚の家に着くと、太一はもはや慣れたもので、チャイムを鳴らしながら「こんにちはーっす」と言って、家の住人に呼び掛ける。
 すると、中から辻堂と妻の美加子が玄関まで来てにこやかに二人を出迎えてくれた。自己紹介の挨拶をしてから、二人は居間に通された。男の人に自分のことを公の場で紹介してもらえるのも、栞にとっては新鮮な経験だ。
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