ロング・ディスタンス
「長濱先生もずっとフリーなんですよ。多分、今までお医者さんを目指して一心不乱に頑張ってきたから、恋愛どころじゃなかったんでしょうね」
細谷が栞に向かって言う。彼の横で、長濱がきまり悪そうな表情を浮かべている。
「先生は苦学してお医者さんになられたんですね」
栞が長濱にたずねる。三十にしてやっと臨床研修に入ったということなので、きっと何年も浪人して医大に入ったクチだろう。医学部入試は難関中の難関なので、そういうケースはそんなに珍しいことではない。
「いや、そうじゃないんです。ちょっと寄り道をしましてね。医師を志す前は別のことをやってましたから、それで医学部に入るのが遅かったんです」
長濱が答える。
「その前は何をされていたんですか」
「きっと変だと思われるだろうけど、昔は総合格闘家を目指していました」
「総合格闘家!?」
あまりなじみのない言葉だ。
細谷が栞に向かって言う。彼の横で、長濱がきまり悪そうな表情を浮かべている。
「先生は苦学してお医者さんになられたんですね」
栞が長濱にたずねる。三十にしてやっと臨床研修に入ったということなので、きっと何年も浪人して医大に入ったクチだろう。医学部入試は難関中の難関なので、そういうケースはそんなに珍しいことではない。
「いや、そうじゃないんです。ちょっと寄り道をしましてね。医師を志す前は別のことをやってましたから、それで医学部に入るのが遅かったんです」
長濱が答える。
「その前は何をされていたんですか」
「きっと変だと思われるだろうけど、昔は総合格闘家を目指していました」
「総合格闘家!?」
あまりなじみのない言葉だ。