ロング・ディスタンス
 高校を卒業して以来、栞とはあまり会わなくなった。それはお互いの生活エリアが異なるためだったが、会わないうちに友人は遠い存在になっていた。距離的にというよりも心理的に遠いのである。栞は成美の知らない人に変わってしまったような気がする。もっと単純な言い方をすると、「なんかやな感じ」なところが目についてきた。
 例の神坂のことを語る時も、男を品定めするような話し方をするのが鼻につく。一介の事務職員や看護師ではなく医者が良い。医者は医者でも中堅どころじゃないといやだなどという言い草。それでは医療に貢献していても、看護師やその他の職員は目にくれるまでもない存在なのだろうか? 新米の医者だってこれから頑張ろうと努力しているのに、完成形じゃないといやだとのたまう。

 本人にこう訊いたらまた怒り出すのだろうか。自分は何様のつもりだと。
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