ロング・ディスタンス
 光太郎が栞の言っていることを知ったら彼女を軽蔑するだろうなと思った。「じゃあ、何かい? 一介の小学校教師にすぎない俺なんて彼女にとっては男じゃないの?」なんて言いそうだ。そもそもエライおじさんと不倫をしている時点でアウトだ。友人のことをどの程度話そうか考えあぐねた。
 栞本人も自分の言っていることが「贅沢」だと言っている。贅沢というか何というか……。
 この前話に聞いた長濱という医者は片足を引きずっているらしい。栞はそのことを悪しざまには言わなかったが、もしかしてそれをあまり好意的には受け止めていないのだろうか。もしそうだとしたら成美はとても切ない気持ちになる。体に障害を抱えていることに、本人の落ち度はないのに。
 昔の強い絆が今の二人の友情をかろうじてつなぎとめているけれど、もっと幻滅させられることがあったら、成美はもう栞とは友達でいられなくなってしまうかもしれない。
 そんな思いを抱えながら、成美はバーベキューの日を迎えた。
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