鬼神姫(仮)
蒼間が突き当たりの部屋の前で足を止めた。
その襖には大きな牡丹と椿が描かれている。金を基調にしたその柄は目が痛くなりそうだ。
銀は二度と瞬きをしてから大きく息を吸い込んだ。
ーー開口一番、番人を降りると言おう。
自分が降りたとて、他に三人もいる。一人くらいいなくとも、何の問題もないはずだ。
「姫様、第一と第二の番人をお連れしました」
名前さえ呼ばれない存在、というより扱い。これが彼らが自分達を人間扱いしていないことは明白だった。
そんな存在の為に。
銀は込み上げる悔しさをどうにか飲み込んだ。
「入りなさい」
屋上で聞いたものより遥かに凛とした声が襖の向こうから聞こえた。