鬼神姫(仮)
蒼間が静かに襖を開けた先にいたのは、やはり昼休みに屋上で出会った二人だった。
明るい茶色の髪を短めに切り揃え、見る相手を射抜くような目付きをした霧原銀。そして少し長めの黒髪をし、大きな瞳をした童顔の花邑陽。
「待っていましたよ。妾、鬼神姫の番人」
雪弥は腹の底から声を出した。
二人の顔は雪弥の言葉を歓迎しているようには見えない。特に銀の方。
陽にいたっては微笑みと緊張を合わせたような表情をしてはいるが、その真意は窺えない。
ーー何を考えているのか。
雪弥は二人の顔を交互に見た。
「悪いが、俺は番人なんてやるつもりはない」
恭しく頭を下げた陽の隣で銀が言うと、す、と蒼間がその横に立った。
「主に拒否権などない。主らは姫を運命から救いだす為だけに生まれた存在」
蒼間が酷く低い、まるで地鳴りのような声で告げると銀は歯を食い縛った。今にも歯噛みの音が聞こえてきそうな程だ。
「俺らは、それ以外に生きる意味はないってことかよ」
「人間など、元々存在価値などない」
銀の言葉に蒼間が冷徹に返す。