鬼神姫(仮)
「何だと……っ」
「お止めなさい。蒼間」
広い部屋に雪弥の声が響く。それは静かなものにも関わらず、威圧的なものだ。
蒼間はそれに失礼しました、と言い、畳に膝を付けた。
「花邑、と言いましたね。そなたも顔を上げなさい」
雪弥が言うと、陽ははい、と答えてから顔を上げた。
「霧原。貴方が番人の務めを成すつもりがないことはよく解りました。それならそれで構いません。今直ぐ此処を去りなさない」
雪弥は真っ直ぐに銀を見詰めて言った。そのつもりのない者がいても仕方が無い。否、こんなことを強制など出来やしない。
「姫様」
蒼間が少々慌てたように口を開く。
解っている。一人でも欠ければ運命に抗うことは難しい。それでも、こんなことを強制出来ないのだ。
ーーまだ未熟な私を護れなど。
雪弥は小さく息を吸い込んだ。