鬼神姫(仮)
庭に、小さな姿を見付けた。陽はその姿に、とある少女を重ねた。
振り払った手。零れ落ちる涙を拭ってやることもしなかった。
もしかした、今生の別れになる可能性だってあったのに。
「花邑様」
その小さな姿は陽を見付けると走り寄ってきた。肩までで切り揃えられた髪が揺れる。背格好は似ているが、髪型も顔立ちも全く似ていない。性格も。
それでも彼女を想起するには十分な姿。
「巴」
陽が少女の名を呼ぶと、巴は丁寧に頭を下げた。
「お久し振りです」
巴はにこやかな表情を浮かべた。託された運命をまことしなやかなに受け入れているのは彼女だけだろう。
その小さな身体の何処にそんな強さがあるのか。
「久し振りだな」
陽は答えてから巴の後ろに目を向けた。
恐ろしいまでに顔立ちの整った男の名は七海だったか。
七海は陽の視線を感じると深々と頭を下げた。