ヘビロテ躁鬱女
 父の年期の入った、シワが深く刻まれた大きな手が振り上げられた。


「そういう意味で言ったんじゃないよ……違う、そうじゃなくて……痛い!!!!」


そのまま振り下ろされ、頬に一発、平手打ちが入る。


「何をするのよ! 違うって言ったじゃない……鬼黄泉、鬼黄泉って馬鹿じゃない!!!! 私なんて生まなきゃ良かったじゃん!!!!」


腫れ上がった頬を押さえ、父の顔を見ずに階段を駆け上がった。


ポロポロと涙が、どうしようもなく零れ落ちる。


――私はこの家族に愛されたことがあったんだろうか……
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