ヘビロテ躁鬱女
 添い遂げたばかりの彼女に背を向け、玄関の方へゆっくりと歩く。


胸の高鳴りはピークだった。体の内から放つ緊張に、また気づく。


――俺はまだ、忘れていない。


「どこへ行くの鉄平? まだ出勤には早いよ……」


寝惚け声が背後から聞こえ、踏み出そうとした足にストップが掛かった。
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