ヘビロテ躁鬱女
「あ、愛子さん……」


鏡越しに目が合った。疑いが溢れ出た、細くした目だった。


「さっきはどうも。浮かれている店長に私のことを配慮して頂いて」


壁面に寄りかかり、愛子は腕を組んで言った。


「全然、そんなのお安い御用! 気にしないで! 体調が悪いって言っていたから……それだけだよ?」


「ふーん……気持ち悪いわね」


愛子は背中で壁に反動をつけ、私の前に仁王立ちになった。


でも今の私は気にならない。一ミリも進んでいない幸福の未来図だけれど、それを頭に浮かべているだけで幸せだったから。
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